おまけのHONEY 外警班の戸惑い


夜警中のモニター前。

「やっぱり、あれはどう見ても変です」
「何が?」
「ボックスにあった…」
「ああ、チョコレート?」

梅沢はデスクワーク中の羽田の横でひたすらにその不自然さを説く。

「なんで池上さんと本木さんなんですか」
「でも、西脇さんにも確認したんだろう?」
「しました」

無線で問うたその返事は呆気なく『バレンタインだからな』というものだった。

「でも納得いかないんですよ。何で池上さんと本木さん…」
「いいか、よく聞け」

それまで黙ってモニターを睨んでいた田中が、態勢はそのままで梅沢を諭す。

「西脇さんのやる事をあまり深く考え過ぎるな」
「でも」
「…梅沢、お前、そろそろ休憩終わりだろ?」

書類を纏めて下を揃えるように軽くテーブルに叩いてから、遮るように羽田が梅沢に声を掛けた。

「…俺達がこうやって、ああでもないこうでもないと言うの想像しても飄々としてんでしょうね」
「じゃないかな。あの人は、そういう人でしょ」

梅沢が派手な足音を立てて外に走り出して行くのを見送った羽田と田中は、視線を交わして、ふと口端を上げた。
仕事が出来て、飄々としていて、厳しくも温かいところもあって、思わぬところで悪戯好き、秘密主義で、隊を大事に思い、行動する、愛すべき人物。

「…だから、止められないんだよな」

…西脇さんの部下はさ?
再び目を合わせた羽田と田中は、喉奥で笑いを噛み殺し、モニターに映る梅沢を見ながら心の中で呟いた。

『お前も今にわかるって。それがここのボスだってこと』


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