HONEY 本木惣伍の食欲


「本木、多分、他意はなかったんだと思うよ?」

何故か必死になって箱の裏まで…それこそ、金のラッピングシートから、銀のリボンまで調べ尽くし…。

「だって西脇さんが置いていったんだぞ?あの人が何の考えもなく置いていくもんか」

恋人の野田が止めるのも聞かず、箱の角を突く。

「そんな探さなくても…」

寒空の屋上。灯った街灯と、壁についた白熱灯だけが頼りの薄暗さの中、肩を並べて白い息を吐き出しながら、野田と本木は座り込んでいた。

「…ね、本木?」
「うん?」
「もう、寒いしさ」
「も、少しだけ」

顔上げて軽く口づけ我が儘を言う本木に、しょうがないなあと野田が呟き。

「何かある筈なんだよ。由弥だって西脇さんが何もなしに俺にチョコくれるなんて変だと思わねー?」

蓋の角まで開けて、それでも納得のいかない本木を窘めるように野田が告げる。

「でもさ、見つけたとこで、中身は喜んで食べちゃってるんだからさ…」


…夜が更けていく…。



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